食文化

クロアチア料理の主な特徴はその多様性である。国を代表する料理や食事として選び出すことはできない。異なる自然・経済環境と多様な文化的影響が、多くの郷土料理を形成してきた。大きく4つの地域に分けることができるが、各地域ともそれぞれの特徴や特産品を持つ地区がある。

アドリア海沿岸は地中海の食文化の一部を構成する。料理はあっさりしていて、コウイカ、ツツイカ、タコ、貝などが入る多くのシーフード料理がある。作り方として、オリーブオイルやワインなどの入ったソースで煮る「ブザラ」、魚で作ったシチューの「ブルデット」、グリル、ペカという金属の蓋の下で焼く方法もある。多くの野菜や豆、野生の植物(アスパラガス、野性の草、「ミシャンツァ」という野草のミックス)も食べられている。野菜はスープに入れたり(「マネシュトラ」という)、蒸したり茹でたりしてオリーブオイルとガーリックで味付けする「レショ」(煮物)にしたりすることがある。オリーブオイルは基本の調味料である。よく食される肉は羊肉で、子牛肉や牛肉はたまに食べられる。人気があるのは牛肉の「パシュティツァーダ」で、それはハーブ、干したプルーンとイチジク、ベーコンを赤ワインで煮込み、一般的な付け合わせはニョッキ(ポテトの団子状パスタ)である。豚肉は燻製か風乾され、プロシュットやパンツェッタになる。チーズの中でパグ島の乾燥した羊のチーズは最も有名である。

牡蠣
アスパラガスの卵とじ
クヴァルネル風シュカンピ
パグ島のチーズ
トリュフは子実体が地下にあるキノコである。高級食材として評価されており、非常に高価になる。その収穫と料理はイストリアが中心地である。
パシュティツァーダ、ニョッキ添え

リカ地方とゴルスキ・コタル地方の料理は、子羊、山羊、牛肉、そしてたまに豚肉の肉料理が一般的である。肉は豆、ザワークラウトやカブの酢漬けと料理されるか、グリルかペカの下で焼くか燻製にする。最も一般的な付け合わせはポテトである(ジャガイモを半分に切りオーブンで焼く「リチュケ・ポーレ」(「リカの半分」)が人気)。野性鳥獣の肉が知られており、特に鹿肉や猪肉の「グラシュ」と呼ばれるシチューが食べられる。その森にある豊富な種類のキノコも食べられる。伝統的に牛を牧畜している地域の食事には乳製品も多く、「シュクリパヴァッツ」(「キーキー鳴るチーズ」)のようなリカのチーズも有名。

乳製品は北部および中央クロアチアでも代表的である。サワークリームと併せて食べられる新鮮な柔らかい牛のチーズか、ドラーヴァ川の地方の「プルゲ」という、赤パプリカとガーリックで調味した乾燥チーズが有名である。サワークリームはスープやシチューの味付けに使われる。日常食されるのは家禽類や豚の肉である。「プリツァ・ス・ムリンツィマ」という焼いた七面鳥と付け合わせの無酵母のパスタは、ザゴリェ地方やザグレブの周辺で最もよく知られている。「シュトゥルクリ」は、伸ばしたパスタ生地に具を詰め巻いた料理で当地域で最も人気があり、クロアチアの他の地域でも定着している食べ物である。シュトゥルクリは塩辛くも甘くもでき、煮ても焼いてもスープに入れてもよく、具はチーズ、リンゴ、カボチャ、ケシの実、すりつぶしたキビ等も使用できる。昔の料理は、ソバの実、キビ、麦をすりつぶしたものなどからできていたが、その伝統的な食材は現代でも頻繁に利用されている。

プリツァ・ス・ムリンツィマ
クーレン(クーリンとも呼ばれる)
プロシュット
鯉の(串)焼き、スラヴォニアの名物
シュトゥルクリ
北部のスイーツの「オラフニャチャ」か「オレフニャチャ」と呼ばれるロールケーキはイースト生地に砕いたクルミを詰めたもの。

北東クロアチア(スラヴォニアとバラニャ)の料理の伝統には豚肉が重要な位置を占め、新鮮で調理されたものでも、加工された燻製肉や塩漬け肉でも中心となる。例えば、ソーセージ、ベーコン、ハム、ラードをとった残りであるチュヴァルツィ、そして人気の「クーレン」か「クーレノヴァ・セーカ」(「クーレンの妹」)という赤パプリカの入った辛いサラミがある。有名な料理は、いろいろな種類の肉やポテトを、小麦粉と「ジュリチュニャツィ」(「スプーンのもの」)という卵の団子を入れた「チョバナッツ」というグラシュである。川魚は「パプリカッシュ」というシチューに使われる。多くの料理はふんだんな辛い赤パプリカで味付けされている。「サレニャーツィ」は豚のラードから作られるケーキとして有名。

食文化はクロアチアの地域の伝統と現代のアイデンティティーにとって欠かすことができない要素である。観光客をもてなす様々な食文化の催しがあり、イストリアのトリュフの日、クヴァルネルの栗祭り、ヴルボヴェッツの「祖先が食べたものの祭り」、ポジェガの「クレニヤーダ祭り」やイヴァニッチ・グラッドのカボチャの「ブチヤーダ祭り」があげられる。そしてレストランや田舎の農園では伝統的な調理法の料理、また伝統に基づきながらも現代的な料理方法に適応させた料理などがある。